今回のテーマは「マテリアル」についてです。
私たちが生活するこの世界には、多くのマテリアルが常に存在し、満ち溢れています。日常的に私たちが目にするマテリアルは地球上に存在するうちのほんの一握りではありますが、天然のものから始まり、それを人が加工し「素材」となったもの、「素材」から人にしか作り出せないものなど様々なものがあります。
広い意味で「マテリアル」とはまさにこの世界、私たちまでをも形成しているそのものと言えます。が、今回はスケールを絞り、我々が生活する空間でのマテリアル/素材が与える印象とその性質について、興味深い展示会での感想と共にお話ししたいと思います。
– 企画展 「Material, or」 で考える –
(リンク)企画展「Material, or」開催概要 ※2023/11/5終了
https://www.2121designsight.jp/program/material/
多種多様なデザインに向き合う内装業界の仕事は、店舗からオフィスまで様々なマテリアルを取り扱います。天然無垢なものからコストパフォーマンス重視のフェイクまで、数えきれないほどの内装材に触れ頭を悩ませていますが、普段それらがどのように製造され、元はどのような素材だったのか、その素材はどのようなもの=マテリアルからできているのかまで考えを巡らせることは少ないのではないでしょうか。
21_21 DESIGN SIGHTギャラリーで開催していた企画展「Material, or」は、日常に存在するマテリアルのルーツからその先の使い方、可能性に至るまでをユニークな展示方法で紹介した興味深い展示会でした。その中でも個人的に印象に残った展示を合わせ、内装としてのマテリアルについて紹介していきます。
・木材
これは何かわかるでしょうか?
模様と色味、断面の雰囲気から木材と判断できますが、内部は自然の腐食でも虫があけた穴でもありません。なんとキツツキが堀った巣なのだそうです。
木材はその温もりと自然な風合いから、内装デザインにおいても非常に人気のあるマテリアルです。ナチュラルな風合いが心地よさをもたらし、且つ深い色合いのウォールナットから明るいオークまで、木材のバリエーションはデザインの幅を広げます。また「温もり」を感じるというのは見た目だけではなく、材質的にも断熱性が高いことから住居や人が集まる場所のインテリアによく使われており、このキツツキが木の中に巣をつくったのも、もしかしたら温かみと心地良さを感じたからなのかもしれません。
・土、砂
加工方法により強固にもなり形も変幻自在なマテリアルといえば、土や泥、砂です。
古来より住居や工芸品まで幅広く使われ、砂や砂利がコンクリートの素となるように、これらは私たちの生活に深く根付いたマテリアルのひとつと言えます。
写真の磨かれた泥団子、作ったことがある人もいるのではないでしょうか?
メッセージの通り、泥や砂は扱う人間の思いによって様々な形に変化します。内装では壁に塗る左官材から硬いタイルまで、使い方も見た目も異なるものが溢れているため元の素材を意識することは少ないかもしれませんが、インテリア以外の分野も含めるとおそらく一番汎用性に優れた素材でしょう。また砂は、後述する我々の世界に必要不可欠なものの素材にもなります。
・ガラス
点々とコンクリートの床に置かれた塊たちは、ガラスです。
このエリアでは日本各地の砂でできたガラスを日本地図状に展示しており、その土地の素材を使いその土地でしか得られない色を表現しています。
ガラスの素は前述した砂、その中でも珪砂という石英からできた砂をはじめ、石や砂の中から取り出される鉱物からできています。大きく結晶状に育った石英は水晶と呼ばれますが、それを高温で溶かすと同様に透明で美しい姿になるというのは面白いですよね。ガラスの透明で繊細な性質は、空間に開放感と透明感をもたらし、光を通し視覚的な広がりを感じさせるのと同時に洗練された印象を与え、時には軽やかで独創的な雰囲気を演出します。現代の建築、内装の世界では必要不可欠なものの一つと言えるでしょう。
まとめ
マテリアルはデザインにおいて、どんなコンセプトや言葉も超えて一目で語りかける存在です。木材の温もりとナチュラルな魅力、タイルの多様性と可能性、漆喰の優雅な風合いとガラスの透明感と開放感。内装や家具においては触り心地や色味など、選ばれたマテリアルがもたらす印象は空間の雰囲気を大きく左右し、相互に影響しあうことで空間に深みや奥行きを与えます。マテリアルの特性を理解し、その個性を引き立てたデザインをすることがポイントとなります。
さて。他にも紹介したいマテリアルは金属やファブリック、再生素材などまだまだありますが、また次の機会に。
最後に、一番印象に残った会場の一言を添えて。
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